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水族館
生涯独身の夫の叔母は現在夫の姉夫妻が暮らす実家で同居しています。
以前はスープが冷めないすぐ目の前のマンションに祖母と暮らしていたのですが、独りになって耳の障害もある方なので独り暮らしをするのは危険となり、姉夫妻の息子の結婚を機にその空いた部屋へと移り住んでもう3年・・週に二度のデイケアサービスが楽しくて仕方ないのと、はしゃぐ叔母の笑顔にほっとしました。
義理のお姉様が働くそのケアホームに週に二度、通い始めたことで以前から得意だった絵を周りの方から褒めて頂ける喜びが生きがいとなったのです。
話し相手ができた喜び・・・補聴器をつけてもほとんど聞こえていない叔母へ優しい言葉を筆談しながらコミュニケーションをとってくれる人々に心をほぐしてもらい、お風呂にも入れてもらい、食事も美味しくて、至れり尽くせりなんだそうです。
叔母は脳腫瘍の手術で右耳の聴覚を完全に失い、左耳もたぶん5%も聞こえない状態です。乳癌、子宮癌を克服して78歳の誕生日のお祝いに夫は新しい携帯電話を贈るつもりでおりました。
叔母で最後になってしまうお墓参りのたびにこの後の処理をどうしたらよいのかも、もう話題に上がりません。
浅草の「むぎとろ」でランチをしながら、一生懸命叔母に筆談する夫の字の幼さに笑いながらも、これから携帯電話を買いにいくからね・・と伝えると、
「私いらないわ~。今の携帯電話で十分だから大丈夫よ」と耳が聞き取りにくいので、大きな声で話す叔母につい周りを気にしてしまう自分の小ささを情けなく想いながらも、じゃ何か欲しいのある?と書くと
「何もいらないわ~」
じゃ~観たいものでもいいよ・・と書くと、
「私、動物園か水族館に行ってみたいと想っていたのよ」と言うので、よし!じゃ 今から行こうとなりまして、急遽葛西臨海公園の水族館へ向かいました。
めいっぱいはしゃいで、一頻り堪能して、駐車場へと歩きながら「一生わすれないわ~!」と大きな声で喜びを表現してくれる叔母に「次回は上野動物園だよ」と負けじとでっかい声で伝えると、「前に上野動物園に行ったのはアツシを抱っこして姉さん達と行ったきりよ・・・」と夫が抱っこされているのを想像しながら、今度は夫が叔母を介護して廻るんだな・・と想うとまたしみじみと感慨深いものがあります。
巡りめぐって恩返しなんですね・・・。
それでもたまにしか会えないから、思い切り優しくできるんだよな・・・ってつくづく想うのです。
自分の親にはここまでやさしくできないと想う。
母と腕を組んで歩くなんてできないと想う・・・。
父に優しい言葉なんてかけられないと想う・・・。
遠いからできるのです。
他人様だからやさしく言えるのです・・・。
夫の叔母とたまたま相性が合ったのです・・・。
でもそのお陰で今度はちゃんと自分の親たちの老後を真剣に考えないといけない、向き合わなければいけないそんな年齢になれたんだなと想いました。
デイケアサービスの有り難みが叔母から伝わって参りました。
終活というキーワードが切なくも身に迫る叔母との一日でした。
少し暖かくなったら上野動物園に参りましょう。