ESSAY
GIFT
歌こそがセラピーであることをお伝えしたくて、2005年から始めた「歌セラピーコンサート」も15年目を迎えました。一番最初の患者は私自身でした。人生の自暴自棄、どん底という音が聞こえた2004年。中越地震が起きた2ヶ月後に長岡市が復興野外ライブをやりたいと声をかけて下さったのです。自信を無くした自分に応援なんて出来るのだろうか・・・。
それでもこのご縁に感謝して自分を奮い立たせる気持ちで長岡へと向かいました。
長岡野外ステージ、夫のピアノ演奏が始まった瞬間「会いたい」のイントロに乗るように大粒の雹が降ってきました。歌をかき消すほどの大粒の雹。両手で傘を握りながら微動だにしないで歌を聴いて下さる方達。時間が止まったかのような感覚の中で、もう一人の冷静な自分が「地球が悲鳴を上げている」という言葉を聞いたのです。とても不思議な気持ちでした。
次の「GIFT」で雨に変わり、ラストの「幸せになろう」で雨はピタリと止みました。
あの時から私自身の心の復興がはじまったのです。人生を変えた奇跡の20分間でした。
その3日後にスマトラ沖の津波が発生し、2005年は新潟の被災地、そしてスリランカへと慰問ライブのご縁が繋がって行きました。そして歌を聴いて涙を流す時間がいかに心を癒すかという事を被災された方達から教えられたのです。それから音楽療法を取り入れたライブをするようになりました。精神カウンセリングの中で精神的に追い詰められた状態に「頑張れ」という言葉を使わないというのがあります。自殺で命を絶つ人が1日に100人、年間3万人を越えた先進国、日本。そんな時代にあえて「がんばれ」という言葉を「ことだま」にして歌にしようと作ったのが
「GIFT」でした。天からの授かり物という意味を持つGIFT。天命に気づくことが生きる力となる・・・そう信じて。天命に気づく前に自分を諦めて自暴自棄になっている大切な人へ「がんばれ」と歌うのです。今の夢が天命ではないかもしれない・・・。
「生きていれば、夢も変わる。出逢いも廻りめぐるから・・・たった一つ、一つでいい。生きる力を探そう」
「がんばれ」という言葉を嫌う方から、音楽だから救われたと言われた事があります。
誰にも相談できない経営者の社長から「この歌聴きながら一人で何度も泣いた」と聞きました。
そう、「がんばれ」という言葉も言霊として伝わった瞬間、自分の生きる栄養素になるのです。
そして今回はじめてこの歌に手話もつけてみました。
リブレットシング(手話と共に歌うこと)のセラピー効果は、バレエや日舞の美しさに言葉の意味が載るという感動があります。歌セラピーの要素である声の波動、旋律の癒し、カタルシスの共感、浄化をカラダ全部を使う感覚、まさに全身全霊で表現することは心と身体と魂の、この3つに
セラピーの効果が生まれるのだと実感します。