ESSAY

4 恋人と呼ばせて -Let me call your sweet heart –

1987年10月5日「バラードシンガー」としてこの歌でトーラスレコードからデビューしました。

「ねぇ朝が来るまで恋人と呼ばせてね・・・」というしっとりした大人の恋の世界観に、当時は心がついて行けなかったのですが、美しいクリシェのメロディに救われながら、じっくりと時間をかけて熟成させてきました。今となっては恥じらいを超えて誇りに思うデビュー曲です。

作曲の井上大輔さんは幼少期に初めてレコードを買ったフィンガー5の作曲をされていた方であり、ブルーコメッツのサックス&ボーカルも担当されたGS時代の大スターです。

デビュー前の「瞳の中に」「Remember」のデモテープを聴いて下さって、井上大輔さんから「君のデモテープから生まれたメロディーだよ」とご本人のラララの歌声のメロディーが吹き込まれたテープを渡されました。その声の優しさとメロディーの美しさに一目惚れのようなときめきがありました。しばらく感動の余韻と言葉の重みを噛み締めながら、どんな歌詞がつくのだろうとドキドキしながら待ち侘びておりました。「恋人と呼ばせて-Let me call your sweet heart -」の歌詞を見た瞬間、英語が苦手な私は一瞬青ざめました。体験したことのない大人の恋の香り。

瞬く間に緊張に包まれ歌入れの時、この英語のフレーズを上手く発音できずに苦戦しました。

何せ初めてのレコーディングです。ディレクターに指示されるように表現できないのです。

パニックになりトイレで息を整えながら、自分が情けなくて泣きました。

悪戦苦闘のレコーディングから発売日を迎え、初めてのキャンペーン。

希望と不安が入り混じり、地に足がついていない中、北海道のラジオ出演の後に事務所の社長に連れられて札幌のスナックに行くと、スナックのママが「恋人と呼ばせて」を

すでに覚えて下さっていて、歓迎を込めて歌ってくれたのです。艶やかな歌声、表現力といい大人の女性そのものでした。新人の私よりずっと上手に歌われてしまいました(汗)

焦ったな・・・デビューはできたものの全然プロじゃない自分にまた落ち込んで、本当にダメダメな新人歌手でした。ここから始まる天職への道をどうぞお楽しみください。