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世界は俺が回してる
なかにし礼著書 「世界は俺が回してる」という本を読みました。
実在したテレビ界の音楽プロデューサーの一代記です。
昭和40年代からはじまった世界のアーチスト達が日本に集結されたTBSの東京音楽祭を総指揮してきた渡辺正文プロデューサーが貫いた舞台裏のエピソードはあまりにも豪快で、我が侭で、今の時代では考えられないようなエピソードが満載で、まるでチャップリンの無声映画を観ているようで痛快でした。
東京音楽祭で一番印象にのこっていたのは、
第3回 の優勝者である ルネ・シマールの「ミドリ色の屋根」です。
カナダからやってきた変声期前の金髪のボブカットのあどけない少年がつたない日本語で歌った
「ミドリ色の屋根」をお茶の間で聞いていた私は、
その瞬間、人生に大きくかかわることになる
夢を見たのでした。
夢をもらったのです。
優勝してしまったことよりも、ほぼ同世代の少年のその天使の歌声と、「ミドリ色の屋根」という心の痛みを
熱唱した魂の叫びに、完全に引き込まれていました。釘付けのまま、たった一回しか聞いていないはずのこの歌を何度も何度も一人でリフレインしていたのを覚えています。
そんな多大なる夢をくれたこの音楽祭を仕切っていた男の人生は我が侭三昧。
あきれるほどのその我が侭を愛おしいと想うほど
テレビというワンダーランドを全身全霊で作り上げてきた人でした。
この本のおもしろいのは、音楽祭でのそれぞれのエピソードに合わせてCDも発売されています。
CDを聴きながらこの本を読んでいると、完全に昭和の時代へと連れていかれます。
それは音楽の憧れが似合う70年代の華々しい時代です。
粋な男の我が侭人生は、フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」がそのラストを飾るに相応しい壮絶な人生です。
昨年の紅白歌合戦では布施明さんが「マイ・ウェイ」を熱唱されているその清々しい笑顔に感動しました。
あるがままに我が侭に、意志を貫いてきた人生だからこそ説得力があるその歌唱力が圧巻でした。
まさしくの「マイ・ウェイ」が似合う時代の、その時代をつくってきたカリスマプロデューサーの人生のお話でした。
人生は歌が似合います。