ESSAY

Silent Rain

歌セラピーVol.7 サイレント レイン

梅雨のシーズンとなりまして、もう30年前になりますが6月に発売された「会いたい」のカップリングは「Silent Rain」という歌でした。1990年6月27日発売なので今年は「会いたい」30周年を迎えます。

作詞は渡辺なつみさんで作曲は沢田知可子です。4枚目のアルバム「I miss you」からのシングルカットでした。デビューして3年目、それまでにお昼のメロドラマやCMのタイアップなどに恵まれながらも、ヒットソングのない状況の中で、4枚目のアルバム制作は言ってみればラストチャンスでした。自分の声を活かせる楽曲とは何だろうと思いついたテーマが「I miss you」でした。

沢田知可子の声の質感からして、失恋など泣ける歌、「涙」は当時から大切なテーマだったのです。I love you でもない、I like youでもないこの「I miss you」という「せつなさを込めた愛」を体感できる歌を作ろうという事になりました。ソングライターとしての私は、歌手である沢田知可子へのプレゼンテーションが必須でした。歌手としての沢田知可子に歌わせるために楽曲選考会で何度涙を飲んだことか・・・汗。ソングライターとしては、一歩も二歩も下がった立ち位置なのです。(今もですが・・汗)

このアルバム制作で、あるアーティストに楽曲提供を依頼し素晴らしい歌を2曲書いて頂いたのですが、サウンドのイメージが違うという理由から2曲とも楽曲を取り下げられるという、思いもいない事件が起きてしまったのです。レコーディングの真っ只中で、私はショックで急性胃炎になり3日ほど入院してしまいました。心が一瞬にして傷つけられた瞬間、ちゃんと身体も傷つくのだと実感したら、なんだかそんな自分が可笑しくなって、退院してすぐ、埼玉の実家から車で再びレコーディングスタジオに向かう高速道路で、サイレントレインのメロディーを口ずさんでいたのです。当時は埼玉の実家から車で都内へと通っていたのですが、車での移動は私にとって最高のスタジオでした。「自分で作ればいいんじゃない・・・」と開き直れたらすっかり元気を取り戻せたのです。どん底まで落ちたら、ただじゃあ起き上がらない、起き上がり小法師の如く、自己治癒力の高さに生命力が漲ってゆくのを感じました。

そう、そんな時だったのです・・・あの「会いたい」の歌詞が送られてきたのは・・・。

トラブルで制作費も大幅にオーバーする事になり、ディレクターは責任を取る形でこのアルバム制作を最後に担当を降りるまでになってしまったのですが、最後の執念とも言えるディレクターの「こだわり」で「会いたい」という歌が完成し、ましてやノンタイアップの「会いたい」をまたまた彼のこだわりでレコード会社ほぼ全員の反対を押し切ってシングルカットさせてしまったのです。最後の情熱が大ヒットへ繋がるとはその時は夢にも思いませんでした。

カップリング曲にこの「Silent Rain」を選曲してくれたのもディレクターからのお餞別でした。

本来ならばお蔵入りした楽曲がシングルになるはずだった事を思うと、全てが決められていたミッションだったのかもしれません。