ESSAY
ココロとカラダに優しいチカラめし #8
山なりは夫婦善哉の味
幡ヶ谷の隠れ家に招かれて約20年、事あるごとに通わせて頂いてる幡ヶ谷の「割烹山なり」さんはすっかり馴染みの店となりました。今ではたまに地方のコンサートにご夫婦で観に来て下さいます。「こっそり地方のコンサートにお邪魔するのが楽しみなんです」とチャーミングに迎えて下さる女将のかや子さん。先日は喜多方にもお越し下さいました。地方へ行くとその土地の地酒を探すのも楽しみなのだそうです。小田原に移住してからは交通費節約にもなるので東京へ来る時は二つ、三つ用事を重ねます。この日は新潮社の取材を受けてから向かいました。行きは新幹線、帰りはロマンスカーという小田原はいつだって旅行気分です!今回は小野澤とボイストレーナーの高田先生のお誕生日会。8人で貸切りになるほどの心地良い空間。何より大将の手間暇かけたきめ細やかな割烹料理は旬の食材に毎回物語りがあってわくわくします。一品すつ丁寧に女将が説明してくれるのですが、その一つ一つを愛おしく楽しそうに語ってくれるので、まずはその説明を味わいます。
■突き出しの一皿
矢柄 磯つぶ貝 のらぼう菜 氷餅掛け「なごり雪の下に春の芽吹きをイメージしましたよ。氷餅は、出汁で伸ばしてとろっとさせて、、、。磯つぶ貝 のらぼう菜にかけ、上からも結晶のようにパラパラっとしました」「氷餅は長野の江戸から伝わる伝統保存食でね、お餅を藁でしばって軒下につるして、パリパリに乾燥させて作ります。指で簡単にほどけて、、、。江戸ではお湯に溶いてお見舞いに用いたり乳児食に用いられていたそうです。」全員 いい子に聞き入ります。そして、大事にパクつきます。もう一つ一つが丁寧で食べるのがもったいないくらいに美しいのです。
■さて2皿目は盛り込み
揚げたての蕗の薹天ぷら、蓮根馬鈴薯桜葉包み→さくっとろっふわぁ で桜餅の香り 抜群でした。鰊(別名 春告魚)の奉書巻き→大根桂剥きを焚いた鰊に巻きます。鹿児島筍旨煮・鰆蕗味噌焼き・新牛蒡牛肉昆布巻き・雌蟹茶碗蒸し、中に鹿児島筍→冬の蟹と筍の春を一品にできる日本の豊かさに感謝しきりです♪
■お椀は
カサゴ海老真丈挟み・春菊→12月から3月が旬、山なりのお野菜は全部お出しするまで出汁に浸ってます。下味を大切にしてます。蓬麩・スナップえんどう
■箸休めは
富山ホタルイカ土佐酢掛け
もち菜→愛知伝統野菜 名を持ち上げると、
尾張の武士が縁起を担いで食していたそうです。
鹿児島そら豆・茄子オランダ煮
■煮物は
蕪含め煮・新青海苔餡・人参桜吹雪
→1.5時間ことこともない温度でじっくり。
桜は、人参を型取り出汁に浸したもの
■炊き立て土鍋ご飯
牡蠣と筍の土鍋ご飯と蕗と太刀魚の土鍋ご飯
筍と牡蠣というペアリングが蓋を開けた瞬間の香りと彩りが実に美しいのです。毎回2種類の土鍋ご飯を味わいたくて6人~8人でお邪魔するのです。
■デザートは
ももゆみの愛情たっぷり持ち込み手作りバスクチーズケーキにキャンドルでサブちゃん先生と小野澤が仲良く火を消しました。
今回のお酒は大将オススメのサントリーのだるまウィスキーのソーダ割り。だるま…懐かしい味わい。加賀鳶の冷酒もキリッと和食に合います。
いつも山なりの大将と女将のかや子さんのやり取りを見ているだけで幸せになります。味も天下一品ですが、山なり御夫妻に会いたくなるのです。まさに山なりは夫婦善哉の味わいです。